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チュートリアル RS-485:今なお最も堅牢な通信(1/2)
2017.5.9 7:23 pm
ワイヤレスネットワークの急速な普及にも関わらず、特に過酷な環境において、有線シリアルネットワークは引き続き最も堅牢で、高信頼性の通信を提供しています。これらの優れた技術で作られたネットワークは、産業およびビルオートメーションアプリケーションで効果的な通信を提供します。これらのアプリケーションではノイズ、静電気放電、および電圧フォルトに対する耐性が要求され、これらのすべてが稼働時間の増大につながります。 このチュートリアルではRS-485プロトコルについて概説し、産業アプリケーションで広く使用されている理由およびそれが解決する一般的な問題について解説します。
RS-485とRS-422
RS-485が過酷な、産業環境で最も広く使用されるインタフェースプロトコルである理由についての考察
RS-485トランシーバは、過酷な産業およびビルオートメーションネットワークにおいてシリアルポート通信用の物理層を実装するための最も一般的なインタフェースです。このシリアルインタフェース規格は、ツイストペアのワイヤ上で、産業アプリケーションに必要な長距離・高速伝送用のシングルパス差動信号方式を提供します。RS-485規格は、過酷な環境に耐えることができる堅牢なインタフェースを提供します。産業およびビルアプリケーションの一般的な問題の1つは、高速スイッチング誘導性負荷からの大きい電気的過渡、静電気放電、およびファクトリーオートメーションに関連する頻繁な電圧サージによって、データ伝送のエラーやネットワークの物理的な破壊が生じる場合があることです。
今日一般的に使用されるデータインタフェースプロトコルには、多数のタイプがあります。それぞれ特定のアプリケーションを念頭に開発されたもので、特定のプロトコル仕様一式と構造を備えています。これらのインタフェースの例として、CAN、RS-232、RS-485/RS-422、I2C、I2S、LIN、SPI、SMBusなどがあります。これらの中で、特に工場やビルオートメーションなどの過酷な産業環境/電気的環境において、RS-485とRS-422は現在でも最高の信頼性を提供します。
RS-485とRS-422は似ていますが、同じではありません。これらの2つの規格の間にはいくつかの相違点があり、システム設計時に注意する必要があります。
RS-422は、1つのバスマスター(ドライバ)のみを必要とする産業環境に最適です。
この規格は、最大10Mbpsでデータを送信するメカニズムを提供します。RS-422は、ツイストペアのワイヤを使って各信号を送信することで、ノイズ耐性を高めボーレートとケーブル長を増大します。RS-422はマルチドロップアプリケーション用の仕様で、TIA/EIA-422に従って、1つのトランスミッタのみが最大10のレシーバが接続されたバスに接続され、バス上で送信を行います(図1)。標準的なアプリケーションには、プロセスオートメーション(化学製品、醸造、製紙)、ファクトリーオートメーション(自動車および金属製作)、HVAC、セキュリティ、モーター制御、およびモーションコントロールがあります。
RS-485は、複数のバスマスター/ドライバが必要な場合に、より高い柔軟性を提供します。TIA/EIA-485に従ってデバイス数が10から32へと増加し、より広いコモンモード(±7Vに対し-7V〜+12V)とわずかに低い差動電圧範囲(±2Vに対し±1.5)によって最大負荷時に適切な信号電圧を確保するという点で、RS-422より改善されています。
この強化されたマルチドロップ機能によって、1つのRS-485シリアルポートに接続されたデバイスのネットワークを作ることができます。より高いノイズ耐性とマルチドロップ機能を備えたRS-485は、PLCまたはその他のデータ収集やHMIなどの動作用のコントローラにネットワーク接続された複数の分散デバイスを必要とする産業アプリケーションで最も多く選択されるシリアル接続になっています。RS-485はRS-422の上位仕様であるため、すべてのRS-422デバイスはRS-485によって制御することが可能です。
RS-485の標準的なアプリケーションはRS-422の場合と同様で、プロセスオートメーション(化学製品、醸造、製紙)、ファクトリーオートメーション(自動車および金属製作)、HVAC、セキュリティ、モーター制御、およびモーションコントロールがあります。そのため、この2つの規格では、拡張された機能を持つRS-485の方がより一般的に使用されます。
RS-485の詳細
すでに述べたように、TIA/EIA-485 (通称RS-485)は産業アプリケーションで最も広く使用されているインタフェースです。RS-485は最大4000フィートの長距離で使用することが可能で、より短い距離では40Mbps以上の高速が可能です。差動というRS-485の特性によって長距離での動作が可能ですが、ケーブル長が長くなるほど速度が低下します。
距離以外にも、データレートはワイヤ径およびネットワーク上のノード数に影響されます。MAX3291などのプリエンファシスを備えたRS-485は、帯域幅と距離の大幅な向上が可能で、それを必要とするアプリケーションに対応します。
RS-485インタフェースは、1ペアの伝送バスによる半2重モード、または2ペアのバス(4線)による同時送受信動作が可能な全2重モードで使用することができます。半2重マルチドロップ構成では、最大32のドライバと最大32のレシーバを処理することができます。1/4ユニット負荷を備えた新しいデバイスや、さらにはMAX13448Eなどの1/8ユニット負荷レシーバ入力インピーダンスのデバイスが登場しており、同一バス上に128〜256のレシーバを接続可能になっています。この強化されたマルチドロップ機能によって、図2に示すように、1つのRS-485シリアルポートに接続されたデバイスのネットワークを作ることができます。
レシーバ入力感度は±200mVです。すなわち、1または0のビットを認識するために、レシーバは0 の場合+200mV以上、1の場合-200mV以下の信号レベルを必要とします(図3)。
±200mVの範囲のノイズは、基本的にブロックされます。差動形式によって、効果的にコモンモードノイズが除去されます。レシーバの入力インピーダンスは12kΩ (min)で、ドライバの出力電圧は±1.5V (min)、±5V (max)です。
・本チュートリアルは、こちらよりPDFファイルがダウンロードできます。
http://ic.maximintegrated.com/Maxim_Interface_Tutorial_Form_JP
・参考文献
1. アプリケーションノート4491 「稲妻または静電気スパークによる損傷?それは身長で決まります!」
2. アプリケーションノート5260 「過酷な産業環境のための設計について」
3. アプリケーションノート639 「ESD保護をリードするマキシム」
・問い合わせ先
マキシム・ジャパン株式会社
http://www.maximintegrated.com/jp/