第一回 「ユビキタスIDセンター記者会見」

 

4月頃から予告を出しながら、何から手を染めるべきか迷って迷って、やっときっかけをつかみました。

6月23日に五反田のYRPユビキタスネットワーキング研究所(以下UNL)で「ユビキタスID実証実験に向け、標準IDタグの認定」 サブタイトルが食品トレーサビリティ実証実験の開始、産官学の連携強化という記者会見に出席しました。

本当は記者会見の行われた6Fに入りたかったのですが、押すな押すなの盛況であぶりだされて8Fの会議室でプロジェクター映像を見る破目になりました。

なお、発表で使われた資料は、すべて下記のURLから入手できます。

http://uidcenter.org/

1.出席者
UNL所長の坂村教授以外に下記の方々がひな壇側におられました。

 

総務省 情報通信政策局 技術政策課 研究推進室長

   

渡辺 克也氏

 

凸版印刷株式会社 経営企画本部 取締役

 

 

沖津 仁彦氏

株式会社日立製作所 ミューソリューションズベンチャーカンパニー

   

カンパニー長&最高経営責任者(CEO)
井村 亮氏

 

株式会社ルネサス テクノロジ

   

第一事業本部 マイコン事業部 ICカード部 担当部長
立木 卓夫氏

凸版さんは今回、T-JunctionというPassiveタイプのRFIDの認定を受け、日立さんはいわずと知れたμチップ、ルネサスさんは旧日立半導体時代にUNL/東大から受注したAE45Xの認定を受けたわけです。

 

2.ユビキタスIDセンターの説明
まず、坂村教授(所長?)からユビキタスIDセンター(UIDセンター)の説明があった。
この組織、T-Engineフォーラムの下部組織の非営利組織です。
それもいわゆるNPO法人にはなっていない任意団体です。

 

親組織であるT-Engineフォーラムには、昨年6月に発足したにもかかわらず欧州企業、米国企業、韓国企業など海外企業数10社を含み現在180社参加 という巨大組織。

3.今回の認定対象チップと提供会社のコメント

・μチップ

 

日立 井村氏コメント
消費者のためにこの企画に全面賛成
世界中の消費者に、愛知万博に、紙幣にと広げたい

・凸版T-Junction

 

凸版 沖津氏
新事業への意欲満々という意味のコメント。すこし口が先行して?
スキャナ(Reader/Writer)の値段にまで言及、こういう場ではアブナイ。

・eTRON/16-AE45X(YRP-UNL、東大、ルネサス)

 

ルネサス 立木氏
社としてユビキタスを標榜しているし、全面協力をさせていただく旨の発言

以上当事者に対し、国としての立場から
総務省 渡辺氏からコメントがあった。

 

ユビキタスに対する総務省の取り組み2年前から。当時は「何それ」という状況であった。
e-Japanはインフラ構築の目的は達成された。
e-Japan2(5月にオープン)はユビキタス社会、IT国家戦略の軸である研究開発はT-Engineのように見せる、わかる研究が必要だ

最後に坂村教授が〆て

 

認定待ち数社ある
チップは例えば凸版さんのは(13.56も)900も2.45Gも対応できる、一部で騒がれている周波数問題も技術が解決する。こういったサービスは トータルアーキテクチャが重要だ

 

4.実証実験について

・枠組み

 

UNL、よこすか葉山農協、京急ストアが協力する食品に問題があれば誰がどこでいつどのように作ったかをトレースできる仕組み(トレーサビリティ)を構築し実証する
また、トレーサビリティだけでなく、肥料や農薬の誤用事故から消費者を防ぐなどの試みもする。

・期間は H15年度一杯を考えている

   

・特徴

 

トレース情報の自動取得
食品開発の環境をユビキタス化
→実際には畑をユビキタス化(農薬管理など)農家の仕事を支援
食品販売も巻き込み、流通経路のユビキタス化を図る

・UID技術のアーキテクチャ説明

 

UC(ユビキタスコミュニケータ:スキャナ付万能端末)中心でUID解決サーバーなどなど
トータルシステムアーキテクチャを構築する。
ここで重要なのはTAGチップの認定=互換保証

Q&Aも活発で11時にスタートした記者会見は12時半までかかりました。
この手のお話には最近どっと人が集まるようで、表1にあるように、6月に入ってからも関連発表や記事が山ほどでています。私も時折記事やイベントに触れながら、一方ではRFIDとはなんぞや、のようなところからも説き起こしてゆきたいと思います。

そうそう、今回はデジカメを忘れたので写真はありません。この程度だったらカメラ付携帯電話で十分だなぁ、記者たるもの必需品と知れ、とまぁ反省もしました。

初回はまずこれまで。

 

表1

日付

発表タイトル

ポイント

2003/6/23

ユビキタスIDセンター,農産物を使ったICタグの実証実験を開始

認定チップ3種類を用いる。単純なトレースだけでなく、誤用による事故防止

2003/6/20

日本航空と共同で国際航空貨物業務への無線ICタグ適用実証実験を実施

フォークリフトによる貨物の自動位置認識

2003/6/15

Sun社,Gillette社の利用を想定した無線タグのデモ

Retail Systems Conference & Exposition 2003会場での小規模なデモ。商品(ジレットのシェーバ)の場所は特定できない

2003/6/14

米Microsoft,無線ICタグの標準規格策定の取り組みに参加

Microsoft社とAuto ID社が協力,当初,製造業界と小売り業界のサプライ・チェーンに焦点

2003/6/14

「ICタグ技術でメーカー/小売店は年間数十億ドルの経費削減が可能に」, 米Accenture調査

最も有効な分野は,在庫管理関連業務。今後12〜24カ月のあいだに,パレットやケース・レベルでオートIDの利用が広まる

2003/6/14

見えてきたICタグの問題点、米ジレット、マルエツ、伊藤忠の実証実験で明らかに。日経コンピュータ 2003年6月2日号

商品を扱う人間のちょっとした行為や周囲の金属の影響によって、ICタグのデータが読めなくなる。タグを商品のどこに付けるかも大きな問題だ。

2003/6/13

日本貨物鉄道ICタグとGPSで荷物の動きを管理、日経情報ストラテジー 2003年7月号

リフトにGPSを搭載、貨物駅の作業を1列車当たり3時間削減

2003/6/13

無線タグを使う運転免許証、早ければ来年度から交付へ

警察庁は2004年度から順次、運転免許証を非接触型ICカードに切り替える

2003/6/13

大根にもICタグを,NTTデータがマルエツとの実験概要を明らかに、丸紅,大日本印刷が協力

2003年10月前後に実施。生鮮食品や冷凍食品にICタグ,流通センターや店舗で実際に運用し問題を洗い出す。13.56MHz

2003/6/13

食品に「ゴマ粒チップは必要」は53%,NTTデータの調査から

食品業界90社を対象に実施。RFIDの要求価格は「1円以下」が73.2%

2003/6/12

【Retail Systems速報】TI社など,バーコードと無線タグの共存システムを出展

バーコードと無線タグ(RFIDタグ)を共存させた物流システムの実演

2003/6/12

【Retail Systems速報】Wal-Mart社が2005年1月に無線タグを大量導入へ,まずは納入上位100社が対象

無線タグの単価は25米セントとする。まずは自動車のタイヤや電化製品,化粧品などが対象

2003/6/11

東研、ICタグ読み込むバーコードリーダー開発

価格は12万8000円でバーコードのみのタイプと同価格

2003/6/10

NECインフロンティア業界最小クラスの省スペースを実現したICカード対応カード決済ターミナル

磁気カードだけでなく、クレジットカードの国際標準であるEMVに準拠した接触型ICカードの利用が可能

2003/6/06

小売業向けICタグ・ソリューション,米Intermecが発表

Intellitag RFID対応タグと読取装置,ソフトウエア,専門サービスが含まれる

 
 

自己紹介
1973年に日本電気に入社、以来、2002年に半導体部門が分社されるまで、他の会社に移ったことがないという典型的なサラリーマン。ただ、半導体部門でソフトウェアを志したため、社内ではメインストリートを歩むことなく今日に至る。
その一方、社外には友人が多数、トロンの坂村健先生とも20年来の付き合い。
メールアドレス:h-monden@mud.biglobe.ne.jp