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横田英史の読書コーナー

ゲノム編集の衝撃~神の領域に迫るテクノロジー~

NHK「ゲノム編集」取材班、NHK出版

2016.9.10  11:32 am

 遺伝子情報を切ったり貼ったりして生物そのものを作り変える「ゲノム編集」の最前線を取材したノンフィクション。凄いのは、目的の遺伝子を狙い撃ちして操作し、特定の遺伝子の働き方を変えるところ。NHKクローズアップ現代の放送を書籍化したものである。ゲノム編集の技術的な側面と歴史、最新の適用事例、新興ビジネスを国内外の研究者への取材で明らかにしている。ゲノム編集における画期的な技術「クリスパー・キャス9」など最新の技術を分かりやすく紹介しており、多くの方にお薦めの1冊である。

 ゲノム編集には二つの側面がある。一つは植物や動物に適用し品種改良することによる、食料問題やエネルギー問題の解決、難病の治療というプラスの面。もう一つは、デザイナーベイビーなど、人の受精卵に対する操作という倫理上の問題である。本書を読むと、山中伸弥 京都大学iPS細胞研究所所長の「この25年の中で、おそらく最も画期的な生命科学技術」という発言の意味がよく分かる。

書籍情報

ゲノム編集の衝撃~神の領域に迫るテクノロジー~

NHK「ゲノム編集」取材班、NHK出版、p.224、¥1695

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。