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横田英史の読書コーナー

デジタル・ジャーナリズムは稼げるか~メディアの未来戦略~

ジェフ・ジャービス、夏目大・訳、東洋経済新報社

2016.9.16  11:33 am

 インターネットの出現で新聞や出版、テレビなどのマスメディアとジャーナリズムの世界は大きく変わった。ビジネス的に危機にひんしている現状と今後のあるべき姿を、ニューヨーク市立大学ジャーナリズム学科教授が論じた書である。メディア企業はサービス業であるべきで、情報のプラットフォームを目指せと主張する。マスメディアにおける新たなビジネスモデルを模索している本書は読み応えがある。日本とは異なる米国特有の事情を反映しているところもあるが、インターネット時代のジャーナリズムの在り方を手際よくまとめており評者のような立場の人間にとって役立ち感がある。

 マスメディアの世界が変革期を迎えているのは事実である。インターネットの出現によって、マスメディアによる情報の独占状態が崩れ、コンテンツのコモディティ化が進行した。企業自らが情報を発信するオウンドメディアも盛んである。広告なのか記事なのか曖昧なネイティブ広告には賛否が渦巻し、記事の有料化にも結論が出ない。情報を独占できなくなったマスメディアの価値は低下し、経営危機に瀕する例も少なくない。

 筆者は、これからのジャーナリストに必要なのは起業家精神だと説く。同時に、ジャーナリスト特有の「上から目線」を批判し、謙虚にコミュニティの声に耳を傾け、コミュニティが必要とする情報を的確に提供すべきだと主張する。

書籍情報

デジタル・ジャーナリズムは稼げるか~メディアの未来戦略~

ジェフ・ジャービス、夏目大・訳、東洋経済新報社、p.432、¥2376

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。