横田英史の読書コーナー
Imagine: How Creativity Works
Jonah Lehrer、Houghton Mifflin
2013.1.14 12:00 am
集中して読む時間がとれなかったこともあり、読了するまで半年もかかってしまった。WIREDの編集者である筆者は、イマジネーションとは何か、どこから生まれるかについて、古今東西の事例をひきながら論じる。この手のビジネス書の常連である米3Mや米P&G、米Pixarといった企業だけではなく、音楽家や作家、起業家など事例は多岐にわたり読み応えがある。Nikeの有名なスローガン“Jus Do It”や I・NY キャンペーンのアイデアが生まれたキッカケなど、興味深い話が満載である。2012年春にNew York Timesのベストセラー欄に数週間にわたって顔を見せていたのが納得できる良書だ。日本語訳が出ていないのが、少々不思議に思えてくる。
イマジネーションは必然であり、けっして偶然ではないというのが筆者の基本的な考えである。イマジネーションにつながる環境を作ることは可能だし、病気やドラッグ、スランプ、執着心といった要因もキッカケになるという。例えば筆者は、音楽活動から一度引退し新境地を見つけたBob Dylanを例に、「創造性は手錠をされた状態から解き放たれることから生まれる。イマジネーションには制約と解放が不可欠」と結論づける。オープンなコミュニケーションの重要性にも言及する。例として挙げるのが米Pixarのトイレ。従業員が自然に集まる場所に配置され、何気ない会話が交わされる場となっている。これが、自由闊達なブレインストーミングとともにPixarのイマジネーションを支えていると筆者は語る。
大都市の効用という視点も興味深い。多くの人間が集まり、互いに触発し合う大都市はイマジネーションに最適な場所で、「都市は人類最大の発明」と言い切る。
書籍情報
Imagine: How Creativity Works
Jonah Lehrer、Houghton Mifflin、p.279、$26