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横田英史の読書コーナー

秘密戦争の司令官オバマ~CIAと特殊部隊の隠された戦争~

菅原出、並木書房

2013.1.28  12:00 am

 ノーベル平和賞を受賞したバラク・オバマが率いる政権が繰り広げる特殊部隊を使った対テロ対策、無人機を使った暗殺作戦、サーバー攻撃による敵の重要施設の破壊・妨害工作などを暴いたノンフィクション。この書評で取り上げた「外注される戦争―民間軍事会社の正体」「戦争詐欺師」の著者・菅原出の最新刊である。戦争専門のジャーナリストの手によるノンフィクションとあって読み応え十分だ。
 筆者は、ブッシュ政権時代に始められた多くの政策を引き継ぎ、さらに攻撃的に拡大、発展させたのがオバマ政権だと位置づける。ブッシュの秘密作戦のプログラムを劇的に拡大させ、秘密の戦争をエスカレートさせたという。本書はまず、オサマ・ビン・ラディン暗殺計画を詳細に紹介する。オバマの居場所を捕捉するまでの過程や、どのように暗殺が実行されたのかを明らかにしている。
 さらにアフガニスタンの占領政策とその失敗について、アフガニスタンの国内事情とともに詳細な説明を加える。中国やパキスタン、アフガニスタンの複雑に絡まった裏事情に触れることができ、なかなか刺激的である。本書で出色なのは、アフガニスタンやパキスタンの事情通やキーマンへのインタビューである。けっして新聞には登場しない面々であり、戦争ジャーナリストとしての面目躍如といったところだ。

書籍情報

秘密戦争の司令官オバマ~CIAと特殊部隊の隠された戦争~
菅原出、並木書房、p.263、¥1,680

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。