横田英史の読書コーナー
リーダーを目指す人の心得
コリン・パウエル、トニー・コルツ、井口耕二・訳、飛鳥新社
2013.4.19 12:00 am
ノウハウ本っぽいビジネス書にはさほど興味はないのだが、著者の名前に惹かれて購入。コリン・パウエルといえば、湾岸戦争で米統合参謀本部議長、ブッシュ政権で国務長官などを歴任し、1996年の大統領選挙に出馬していれば当選確実とも言われた人物である。人望や見識に優れているといわれるパウエルが、どういったリーダー論を展開するのか興味津々で買い求めた。有名な「13カ条のルール」は粒度に差があり今一歩だが、興味深いのは経験談の数々。パウエルが感情をあらわにしている部分が登場し興味深い。万人向けの書とはいえないが、米国のベスト・アンド・ブライテストを知るうえで貴重な情報を与えてくれる。
パウエルは本書で6章に分けて仕事論と人生論を披露する。「コリン・パウエルの13カ条のルール」「己を知り、自分らしく生きる」「人を動かす」「情報戦を制する」「150%の力を組織から引き出す」「人生をふりかえって」だ。これらの章で貫かれてるのは、多くの人との関わりである。特にレーガン大統領やダイアナ妃とのエピソードもなかなかいい。
冷静な印象が強いパウエルだが、本書には怒りをぶつける個所がある。国務長官として2003年2月に行った「イラクの大量破壊兵器保有」を指摘した国連演説の関する下りだ。こう安全保障委員会で演説したものの、大量破壊兵器はいっこうに見つからない。そもそも証拠をよく調べてみれば、信頼できない情報源に基づいたCIAからの報告をはじめ、信憑性に問題があった。満天下に向かって嘘をついたことになったのだ。パウエルは、嘘つき呼ばわりするブロガには心穏やかでないことを明らかにするとともに、問題に気づかなかった自らに怒りをぶつけている。
書籍情報
リーダーを目指す人の心得
コリン・パウエル、トニー・コルツ、井口耕二・訳、飛鳥新社、p.349、¥1,785
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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