横田英史の読書コーナー
赤塚不二夫のことを書いたのだ!!
武居俊樹、文春文庫
2013.4.22 12:00 am
赤塚不二夫の担当を35年にわたって務めた小学館の元編集者が、赤塚の日々のハチャメチャな生活やマンガにまつわる裏話、少年マンガの変遷などを紹介した書。古き良き編集者と作家の関係が描かれている。著者の赤塚への愛情があふれた1冊である。昭和30年代生まれの評者にとって懐かしいマンガ家とマンガが続々登場する。それだけでも本書は十分に楽しめるし、読む価値がある。ちなみに解説はやまさき十三が書いている。これも、なかなか味わい深い内容である。
筆者は小学館に入社し少年サンデーの編集部に配属になる。最初に赤塚の「お松くん」の担当になる。当時のサンデーでは、おそ松くんと藤子不二雄の「おばQ」、つのだじろうの「ブラック団」が看板連載だった。この下りを読むだけで、懐かしさでいっぱいになる。赤塚と寝食を共にした筆者だけに、本書では赤塚のさまざまなエピソードがてんこ盛りになって語られる。それに、高井研一郎(総務部総務課 山口六平太)、北見けんいち(釣バカ日誌)、古谷三敏(ダメおやじ)と並ぶアシスタントもすごい。
エピソードもすごい。小柄な赤塚が巨漢の梶原一騎を腕相撲で負かした話し、少年マガジンの「天才バカボン」をサンデーに引き抜いた事件、ヤクザに追われた逃亡生活などすさまじい。最後は崩れていく赤塚を、筆者は優しいまなざしで描いている。ちなみに筆者は、赤塚のほかにも古谷三敏、石井いさみ、あだち充などの担当編集者を務め、多くのヒットを飛ばした敏腕編集者である。
書籍情報
赤塚不二夫のことを書いたのだ!!
武居俊樹、文春文庫、p.367、¥650
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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