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横田英史の読書コーナー

量子革命:アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突

マンジット・クマール、青木薫・訳、新潮社

2013.6.18  12:00 am

 本書を開いてすぐに目に飛び込んでくるのが、1927年に開かれた第5回ソヴェイ会議の写真である。アインシュタインやキュリー夫人を含め、錚々たる物理学者29人が居並ぶ。なんと29人のうち17人がノーベル賞を受賞する。本書は量子論100年を振り返る物理学者列伝である。アインシュタインやボーア、マックス・プランク、ハイゼンベルク、シュレーディンガー、オッペンハイマー、フォン・ノイマンといった物理学者の逸話をふんだんに盛り込む。天才たちの知的ゲームの数々を人間味たっぷりに描かれている。特にアインシュタインの実像は興味深い。
 本書のクライマックスはアインシュタインとボーアの論争である。量子物理学が腑に落ちないアインシュタインはボーアに何度も論争を挑む。その都度、ボーアと弟子たちは反論に成功する。一連の論争を通してアインシュタインの人となりが伺えて興味深い。
 かなりディープな内容なので万人向けとはいえないが読み応え十分である。科学史好きにお薦めしたい。驚くのは翻訳者の力量だ。量子力学についての専門知識が必要な内容だが、こなれた日本語でこの手の書籍としては分かりやすく仕上がっている。

書籍情報

量子革命:アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突
マンジット・クマール、青木薫・訳、新潮社、p.527、¥2,800

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。