横田英史の読書コーナー
卵子老化の真実
河合蘭、文春新書
2013.8.15 12:00 am
先日の書評で取り上げた「産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃~」と同じテーマを、“日本で唯一の出産ジャーナリスト”が扱った書。20年あまり出産を取材してきた著者らしく、取り上げる内容は的確で読み応えのある内容に仕上がっている。「産みたいのに産めない」がNHKらしく具体的事実でぐいぐい押してくるのに対して、本書は手練のジャーナリストらしくトピックスを適切に配置して読者を引き付ける。図版のよさも、本書の特徴の一つである。卵子老化に興味を持たれた方は、両方の書を読むことをお薦めする。
本社は4章構成をとる。第1章の「何歳まで産めるのか」で35歳以上の妊娠の難しさを統計データや歴史的背景に言及しながら指摘する。驚くのは明治女性の高齢出産である。45歳以上の出産数は現代の20倍を超えている(ただし明治の女性は、若いうちに最初の出産を終えている)。第2章は「妊娠を待つ」。不妊治療の現場を問題点とともに明らかにしている。第3章では「高齢出産」を扱う。特に、興味深いのが出生前診断についての記述だ。この対処が難しい問題に対して。妊婦がどのように考え、どのように行動しているのかを取材をもとに明らかにする。第4章は「高齢母の育児」で、陥りがちな問題とともに、高齢であることのメリットにも言及する。視点がユニークで思わず唸ってしまう。
書籍情報
卵子老化の真実
河合蘭、文春新書、p.253、¥893
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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