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横田英史の読書コーナー

ディズニーリゾートの経済学 新版

粟田房穂、東洋経済新報社

2013.8.23  12:00 am

 この4月に30周年を迎えたディズニーリゾートのビジネスモデルを紹介した書。経済学と銘打っているがアカデミックな内容ではない。元朝日新聞の記者らしく読みやすい文章で、儲けの仕組みを説いたビジネス書である。筆者は1987年刊行の「ディズニーランドの経済学」に著しており、ディズニーランドを経済的視点から分析した草分けとして知られているという(ディズニーランドが竣工したのは1983年3月)。もっともディズニーランドについては語られつくされた部分が多く、本書で得るところはさほど多くないかもしれない。
 本書はディズニーランドだけではなくディズニーシー、イクスピアリ、舞浜のホテル群に言及するとともに、大阪のユニバーサル・スタジオとの対比も行う。ディズニーランドやディズニーシーのコンセプト、優れたユーザー・エクスペリエンスを提供する仕組み、米ディズニー社との関係などについて過不足なく扱う。大きな驚きはないが、まとまりのよいビジネス書という印象だ。
 なお本書は2001年に出版した同名の書籍に、日本の消費社会の成熟化、日本文化の異文化への対応などの視点を加味したもの。前者は「『成熟消費社会』の経済学」、後者は「『ディズニー』を受容する日本の異文化吸収力」と題する章を設け解説している。

書籍情報

ディズニーリゾートの経済学 新版
粟田房穂、東洋経済新報社、p.256、¥1,680

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。