横田英史の読書コーナー
世界が認めたニッポンの居眠り~通勤電車のウトウトにも意味があった!~
ブリギッテ・シテーガ、畔上司・訳、阪急コミュニケーションズ
2013.8.27 12:00 am
電車や会議、授業、国会での居眠りは日本ではごく普通の風景だ。昼食後の会議の眠たさは、誰しも経験済みだろう。本書は、ケンブリッジ大学の文化人類学者が日本人の居眠りを論じた書である。日本の居眠りのほか、世界の睡眠文化についても論じている。筆者は20年を費やして、日本人がどのように眠っているのかを観察するとともに、どのような状況で居眠りをしているかを研究してきたという。ちなみに本書によって「イネムリ」という言葉がドイツ語圏で普及し、いまやドイツでも通じるという。
タイトルから下世話な内容を期待するかもしれないが、とても真面目な本である。帯の「なぜ日本人は降車駅に着くと、突然ニョキッと起き上がるのか」は少々ミスリードだろう。タイトルと帯に誘われて買うと肩透かしを食った気分になるかもしれない。読んで損のない内容だが、購入するときは勘違いしないように気をつけたほうがよい。
本書は日本人の睡眠習慣、日本の睡眠の歴史、世界と日本の睡眠、睡眠と余暇、居眠りの社会的ルール、居眠りの社会学、賢くなるための短眠法といった切り口で居眠りを論じる。立て付けは魅力的で悪くない。例えば眠りのパターンについて三つのタイプがあるという指摘は興味深い。第1は単相睡眠の文化圏。1日の睡眠が1回だけで、8時間の継続睡眠は理想とされている。第2が昼寝文化圏。第3が日本人が属する仮眠文化圏である。夜間の睡眠時間が短く、昼寝や居眠りで補っている。
残念なのは、日本社会について違和感の残る記述が散見されるところ。例えばサウナの利用について、「アポイントの場所までの距離が意外に長い場合が多いので、途中にサウナによるのだろう」とあるが、これは取材相手が悪かったのか、あるいは著者の単純な勘違いだろう。
書籍情報
世界が認めたニッポンの居眠り~通勤電車のウトウトにも意味があった!~
ブリギッテ・シテーガ、畔上司・訳、阪急コミュニケーションズ、p.256、¥1,785

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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