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横田英史の読書コーナー

リ・インベンション:概念のブレークスルーをどう生み出すか

三品和広、三品ゼミ、東洋経済新報社

2013.10.6  12:00 am

 イノベーション、ストラテジー、テクノロジーは、ビジネス書やビジネス雑誌が好んで使う言葉である。とりわけイノベーションの影響力は強い。筆者は、この状況に警鐘を鳴らす。イノベーションは儲からない、儲かるのはリ・インベンションだと主張する。日本企業の生きる道はイノベーションではなくリ・インベンション(再発明)にあると説く。新鮮な視点を提供してくれる書である。少し気になるのは本書がイノベーションをかなり狭く定義している点だ。一般的にはイノベーションに分類される事例がリ・インベンションとされており、少し違和感を感じる部分も少なくない。一般的なイノベーションをリ・インベンションとイノベーションに区別すべきというのが著者の主張ともいえる。
 リ・インベンションとは何か。筆者は、携帯電話やキッチン用品といった製品を特徴づけると長らく考えれてきた評価基準を無視して、パラメータを作り変えることと定義する。要するに同じ土俵で戦うのでなく、ルール自体を変えるわけだ。したがってリ・インベンションでは必ずしも技術力は必要なく、構想力が重要になる。リ・インベンションによって、現状の技術なら解消できるにもかかわらず放置されている不合理を解決することも可能になる。一方イノベーションの源泉は部品や製造装置にあり、その成果は独り占めできない。抜本的に製品のあり方を見直すことによって、競合をダントツに引き離すことできる点がリ・インベンションの要諦である。
 ちなみに本書はリ・インベンションの事例を9つ取り上げる。自転車用の見えないヘルメット、スマートペン、キッチン用品を作りなおすOXO(オクソー)、ダイソンの羽根のない扇風機「エアマルチプライアー」、手書きと音声を連動させたペンなどである。

書籍情報

リ・インベンション:概念のブレークスルーをどう生み出すか
三品和広、三品ゼミ、東洋経済新報社、p.285、¥2,100

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。