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横田英史の読書コーナー

雑誌の王様~評伝・清水達夫と平凡出版とマガジンハウス~

塩澤幸登、河出書房新社

2013.10.20  12:00 am

 平凡出版(現マガジンハウス)の創業者の一人・清水達夫の評伝。評伝とはいうものの、全編を通して筆者の雑誌作りへの情熱や古巣・マガジンハウスへの愛情が感じられる。「平凡」「平凡パンチ」「アンアン」「ポパイ」といった雑誌を創刊した清水を通して、雑誌づくりの面白さ・醍醐味を伝えている。マーケティングに基づくのではなく、“思い”を実現した雑誌づくりという良き時代を詳細に描く。筆者は愛情があるが故に、マガジンハウスの現状を手厳しく批判する。ちなみに筆者自身、「平凡」「週刊平凡」「平凡パンチ」などの編集を担当した人物である。万人向けの本ではないが、雑誌好きの方や「平凡パンチ」「ポパイ」全盛期の時代を懐かしく思い出したい方に向く。
 評者は日経コンピュータ編集長だった時に、こんな文章を書いたことがある。「雑という言葉がちょっと気に入っている。力強い響きがいいし、漢字の格好も悪くないと思っている。雑が入っている言葉というと、雑踏、猥雑、雑然、雑談、雑草、そして雑誌…。何となくグチャグチャしているが、しぶとく生き抜くバイタリティが感じられる。現場のにおいや生活感が漂う素敵な言葉でもある」。本書を読み、10年以上も前に書いたこの文章を思い出した。やはり雑誌はいいし、清水の人生が羨ましい。

書籍情報

雑誌の王様~評伝・清水達夫と平凡出版とマガジンハウス~
塩澤幸登、河出書房新社、p.544、¥3,150

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。