横田英史の読書コーナー
科学者が人間であること
中村桂子、岩波新書
2013.11.5 12:00 am
生命科学者・生命誌研究者の筆者が「科学者のあるべき姿」「科学のあるべき姿」を考察した書。東日本大震災のときに、国民の期待に応えられなかった科学者の姿が本書執筆のキッカケとなっている。宮沢賢治や南方熊楠を引き合いに出しながら、自然や生命と科学者との関わり方を論じる。洒脱なエッセイで知られる筆者だが、本書はかなり内省的かつ哲学的である。肩に力が入り過ぎのきらいもあり、好き嫌いが分かれそうだ。
東日本大震災や原発事故について語る科学者や技術者に、多くの人が不信感を抱き、その不信感は日を追うにしたがって強まっていったと著者は当時を振り返る。専門家が生活者の感覚を失い、閉じられた集団の価値観だけを指針に行動していることが露見し、多くの人が不信感を募らす結果につながったと分析する。
では、科学者や技術者はどうすればいいのか。筆者は、人間を機械として見て、その故障を治す技術を開発し、お金を儲けることに価値を見出す「機械論的世界観」からの決別を提言する。その代わりに、生きるものとして人間を知り、そこから新しい生き方を探る「生命論的世界観」に変わるべきだと主張する。その具体的な方法を、ミクロを探求する科学とマクロの自然を同時にとらえる「重ね描き」に求めている。
書籍情報
科学者が人間であること
中村桂子、岩波新書、p.256、¥840
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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