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横田英史の読書コーナー

理系のための交渉学入門

一色正彦、田上正範、佐藤裕一、東京大学出版会

2013.12.28  12:00 am

 著者が東京大学工学部で行った、技術をベースに起業を目指す学生に向け授業を単行本化したもの。年末の日経コンピュータで書評が出ていたのを見て購入。Win-Winの関係に交渉を導く理論と実践を紹介する。コンパクトかつ実践的な書に仕上がっている。理系だけでなく、文系の方が読んでも十分に役立つ。とりわけ最後の「演習問題:ストーリーで学ぶ逆引き理論解説」が秀抜である。多くの方に一読をお薦めする。
 本書は、「理系が交渉を学ぶ意義」に始まり、「交渉の理論」「意思決定」「行動科学に基づくコミュニケーション」「交渉の成功確率を上げる方法」について順々に紹介する。ダラダラと理論を展開するのではなく、実践例の提示と解説に重きを置いているところに特徴がある。取材先とのコミュニケーションを生業とする評者から見ても、的を射た指摘が多くなかなか役立つ。
 筆者は、理系人間が苦手としていると言われるコミュニケーション力は、行動科学の研究に基づく理論を学び、トレーニングを積めば、能力向上を期待できると断言する。むしろ、論理的な思考力が重要となる交渉では、理系人間のほうが高い潜在能力があると見る。

書籍情報

理系のための交渉学入門
一色正彦、田上正範、佐藤裕一、東京大学出版会、p.142、¥2,700

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。