横田英史の読書コーナー
採用基準
伊賀泰代、ダイヤモンド社
2014.1.12 12:00 am
タイトルを見て就活関連の書籍だと勘違いし敬遠していたが、実は非常に優れた人材論・リーダーシップ論である。日本社会論や日本企業論、大学教育論(これが秀抜)といった面も備えている。日本企業の人材育成の問題点に鋭く切り込み、的を射た指摘が多い。全体に役立ち感がある。ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2013の第2位に選ばれたのも納得できる。人材育成を考えている方にお薦めしたい。
筆者は、マッキンゼーの採用マネジャーを12年務めた人材コンサルタント。マッキンゼー(あるいは米国企業)が考える優れた人材像を詳細に解説し、世間一般の認識との乖離を明確にする。例えば、地頭信仰を重視する、分析な得意な人を求めている、優等生を求めている、優秀な日本人を求めているという見方に反論している。コンサルティングの仕事は、多くの場合に正しい答えが存在しない。こうしたなかで求められるのは、とことん考え抜く力であり、独自性があり実現した時のインパクトが大きい仮説を立てる構築力、ゼロから新しい提案の全体像を描く構想力や設計力だと強調する。
筆者は本書を通して、「これからのグローバスビジネスの前線で求められるのは、どのような資質をもった人なのか」「日本ではなぜそれらの資質が正しく理解されていないのか」「それらの資質やスキルを身につけることによって、世の中はどう変わるのか」「それらを身につければ、どのような人生を歩むことが可能になるのか」といった問いに答えている。とりわけ強調するのがリーダーシップの重要性である。日本はそもそもリーダーシップを履き違えており、組織的な育成システムが皆無で、リーダーとなる人材の総量が決定的に不足していると嘆く。
書籍情報
採用基準
伊賀泰代、ダイヤモンド社、p.248、¥1,575
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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