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横田英史の読書コーナー

「一体感」が会社を潰す~異質と一流を排除するの正体~

秋山進、PHPビジネス新書

2014.3.15  12:00 am

 タイトルが秀抜な新書。つい手が出て購入したが、タイトルがすべてを物語っており、想像通りの内容が綴られている。筆者はこのように問う。一流の人材になるために不可欠なのは自律期間。しかし日本の組織では、自律すると反抗的な変わり者と扱われる。筆者は、一体感や仲間意識が組織や会社の成長を妨げているのではないかと危機感を抱く。コドモの組織は、生産規模と効率が重要だった高度経済成長の時代には、同じ方向を向いて、同じ時に同じやり方で、同じことをするほうが効率的で大きな成果につながった。しかし現在の経営環境はそれを許さない。
 では、どうすればいいのか。経営・組織コンサルタントとして25年間で30社以上で働いた経験をもとに、この答えを探る。画期的な指摘をしている訳ではないが、全体に役立ち感のある経営書である。
 筆者は、個人がコドモの組織、組織文化がコドモの組織、マネジメントがコドモの組織を解説するとともに、コドモ組織から大人の組織への戦略、コドモの組織で大人になる戦略、グローバル化と大人の組織といった観点で組織と人材育成の手法を論じる。批評家ばかりの組織、空気に支配されている人たちの組織、稼ぐことを忘れた人たちの組織、仲間としか仕事をしない組織など、15のパターンに分けてコドモの組織を具体的に紹介する。
 例えば仲間としか仕事をしない組織では、どんなに論理的に説明しても、データを示しても、「でも、うち違うから」の一言に勝てないという。コドモの組織の競争力の源泉は「標準化と同質性」だったが、大人の組織では「専門技術力と異質性」がモノを言う。コドモの組織は一体感や仲間意識でつながっていたが、大人の組織を結びつけるのはビジョンや目的、理念だと指摘する。つい膝を打つ合点のいく指摘が多い。

書籍情報

「一体感」が会社を潰す~異質と一流を排除する<子ども病>の正体~
秋山進、PHPビジネス新書、p.224、¥882

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。