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横田英史の読書コーナー

セラピスト

最相葉月、新潮社

2014.3.18  12:00 am

 最相葉月は、出版されたら買わずにはいられないノンフィクション作家の一人である。「絶対音感」「青いバラ」「あのころの未来 星新一の預言」と評者の本棚には最相の著作がずらりと並ぶ。次々と対象を変えて、ディープな取材をこなしていく才能には舌を巻く。その最相が今回焦点を当てたのがセラピスト。箱庭療法の河合隼雄と風景構成法の中井久夫を中核に据えながら、セラピストの実像に迫る。自らも中井のカウンセリングを受けた過程を克明に記す逐語録にはつい引き込まれる。心理療法とは何かに興味のある方にお薦めの1冊である。
 箱庭療法と風景構成法は、いずれも患者の心の奥底にあるものを明らかにする手法だ。本書は箱庭療法と風景構成法の手順を解説するとともに、反発にあいながら臨床の現場に受け入れられるまでの過程を克明に記している。これらの手法を使うことで、時間をかけてセラピストと患者の心が通い、快癒へと向かう過程は感動的である。

書籍情報

セラピスト
最相葉月、新潮社、p.345、¥1,890

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。