横田英史の読書コーナー
グローバル・ガバナンスと日本(歴史のなかの日本政治4)
細谷雄一・編、中央公論新社
2014.3.26 12:00 am
国際連盟の創設から現在に至る、国際関係の組織化の歩みと日本との関係について論じた書。国際関係の組織化とは、政治を介さずに国家間の摩擦を緩和し、日常的な国際協力を遂行をする仕組みを指している。国際組織が国家間の問題を解決することが期待されている国際政治の現状を理解するのに役立つ。このほか、満洲事変の時期における対中技術協力から現在の国連外交まで、日本の外交戦略を検証している点も興味深い。
少々学術的で読みやすいとは言えないが、日本外交に関して示唆に富む指摘が多い書である。例えばエイズ・結核・マラリア対策基金への資金提供、上下水道と給水設備の整備といった国際保健事業は、歴史的に日本が深く関与し、貢献してきた分野である。国際社会の平和と安全のために、日本はこの領域で今後大いに力を発揮できると言い切る。
国連を舞台にしたアジア・アフリカ諸国(AA諸国)と日本との関係を、歴史的に振り返る第6章も興味深い。国連では1950年代末に、相次いで独立したAAの新興国が欧米の超大国の特権に挑戦する構図が生まれた。こうした状況のなか日本は、AA諸国と西側陣営の架け橋役を果たした。このバランスのとれた姿勢によって、国連におけるAA諸国の態度の軟化に寄与し、米国やカナダなどの西側諸国からも期待を寄せられる立場を確立したという。もっとも、日本の是々非々の中立的な外交姿勢は逆効果を生んだことも本書は明らかにする。
書籍情報
グローバル・ガバナンスと日本(歴史のなかの日本政治4)
細谷雄一・編、中央公論新社、p.302、¥2,940
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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