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横田英史の読書コーナー

人間と動物の病気を一緒にみる~医療を変える汎動物学の発想~

バーバラ・N・ホロウィッツ、キャスリン・バウアーズ、土屋晶子・訳、インターシフト

2014.4.29  12:00 am

 人間と動物の垣根を越えて病気の治療法を考える統合進化医学「汎動物学(Zoobiquity)」を紹介した書。人間がかかる病気の原因や症状を、動物の病気から解き明かす。なるほどとヒザを打つ事例を数多く挙げる。動物がどのように病気になり、治っていくかを理解すれば、あらゆる種の動物の健康度を改善できると、筆者は確信する。400ページと分量があるので読み終えるのは大変だが、それだけの価値がある。医学、進化学、人類学、動物学が融合した新たな学問の動向と知見を取り上げており、知的好奇心を満足させられる良書だ。

 筆者は多角的に人間と動物の病気を論じる。がん、中毒や依存症、肥満、自傷行為、過食と拒食、性感染症の知られざる力、思春期に危険な行動をとる理由などをテーマとして取り上げる。興味のあるテーマの章をだけを拾い読みするのも悪くない。

 例えばがんについては、野生生物学、(ヒト)腫瘍学、獣医学の専門家たちが一緒に集まれば、がんそのものへの理解は格段に広がると予測する。2章の「なぜ気絶するのか」では、失神するメリットを水中生物から受け継がれた防衛力と位置づける。5章の「中毒や依存症から抜け出す」では、麻薬でハイになるワラビーや酔っ払う動物たちを紹介する。そして依存症から抜け出す一つの方法は、別の依存症に切り替えることだという。6章の「死ぬほどこわい」を読むと、警察に取り押さえられる過程で死亡する事件が起こる理由が分かる。肥満を扱う7章では、へ~っと驚く事実を明らかにしている。

書籍情報

人間と動物の病気を一緒にみる~医療を変える汎動物学の発想~
バーバラ・N・ホロウィッツ、キャスリン・バウアーズ、土屋晶子・訳、インターシフト、p,408、¥2,484

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。