横田英史の読書コーナー
戦後アジアの形成と日本(歴史のなかの日本政治 5)
宮城大蔵・編、中央公論新社
2014.5.22 12:28 pm
第2次世界大戦後における日本とアジア諸国との関係を分析した書。韓国、中国、ASEAN諸国(ベトナムやインドネシア)との歴史的な関係について幅広い視点で解説する。具体的には、日本がアジア地域の経済発展や秩序維持にどのように貢献してきたかを、政治および外交、経済面から論じている。歴史を踏まえて議論を進める本書の論考は示唆に富む指摘が多く勉強になる。アジアが不穏な状況に陥っている現在、読んで損のない1冊といえる。一般向け内容とは言いがたいが、アジアとの関係について気づきを与えてくれる書である。
本書は7つの視点で議論を展開する。特に「自民党の派閥とアジア外交」を解説した章は興味深い。岸、田中、福田といった自民党政権・派閥が展開したアジア外交を振り返っている。折衝の舞台裏を含め、外交政策の戦略的な位置づけ明らかにしている。このほか、韓国の経済開発をめぐる日韓のネットワーク、ベトナム戦争とアジア、アジアの国際生産・流通ネットワーク、米国外交と東アジア・太平洋秩序、日本のアジア認識・政策の変容についてカバーする。
書籍情報
戦後アジアの形成と日本(歴史のなかの日本政治 5)
宮城大蔵・編、中央公論新社、p.302、¥3240
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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