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横田英史の読書コーナー

国際環境の変容と政軍関係(歴史のなかの日本政治 2)

北岡伸一編、中央公論新社

2014.6.17  12:53 pm

 集団的自衛権に関する論議がさかんな現在、読んで損のない書である。明治時代以降の近代日本における政治と軍部、軍事と外交、軍事と財政、警察と軍部の関わりに焦点を当てて検証している。政治がどのように軍部を統制したのか、あるいは統制できなかったのかについて、幅広い資料も基づいて論じる。定説にとらわれない視点を提供してくれる良書である。
 本書を読むと、「歴史は過程を知ってこそ役立つ」ということを実感する。例えば明治時代の安全保障。日本と清、朝鮮、英国、ロシアが複雑に絡み合っているなかで、安全保障について三つのパターンが存在したことを明らかにする。三つからどのように意思決定がなされたか。その過程をつぶさに明らかにしないと、教訓として生かせない。
 日本海軍と他国の海軍との協力関係についての議論も興味深い。戦前、戦後にかかわらず、日本海軍と海上自衛隊は自国防衛の観念が強烈で、他国との協力に対する意識がきわめて希薄で、多国籍軍の一員として共同作戦や共同行動に積極的な姿勢を示し国家目標を達成した事例は極めてまれという。このほか戦費調達の面から、議会が軍部を制御できたのではないかという視点も重要だろう。

書籍情報

国際環境の変容と政軍関係(歴史のなかの日本政治 2)

北岡伸一編、中央公論新社、p.318、¥3240

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。