横田英史の読書コーナー
イベリコ豚を買いに
野地秩嘉、小学館
2014.6.18 12:53 pm
イベリコ豚といえば、どんぐりを食べて育ったスペイン産のブランド豚というイメージだろう。そのイベリコ豚に興味を持ち、実物を見るためにスペインまで出かけ、最後にはハム作りに手を染めたノンフィクション・ライターの顛末記。ノンフィクション・ライターらしく、自らの周囲で起こる出来事を客観的に観察しながら筆を進める。肩の凝らない内容なので、オフの時間にお薦めの1冊である。
イベリコ豚を見るためにスペイン渡航を決意した筆者だったが、日本で口蹄病が流行したこともあって相手から拒否される。だったら、イベリコ豚の買い手になれば問題ないだろうと一計を案じる。何とも大胆な発想だが、おかげで放牧場の見学が認められる。本書の前半は、精肉工場の見学や工場の経営者との交流、スペイン人の食生活、スペイン流のイベリコ豚の食べ方など、楽しい取材の話が続く。イベリコ豚について薀蓄を語りたい方には必読だ。
後半は豚肉商人になるまでの奮闘記である。イベリコ豚の買い手になったものの、商品化しなければいけないし、売りさばく販路も必要になる。ノンフィクション作家に土地勘があるはずもない。筆者はレストランのシェフやハム製造工場の経営者などと試行錯誤を繰り返しながら、商品化にこぎつけ販路を開拓する。イベリコ豚を使ったハムは、いかにも美味しそうである。つい取り寄せたくなってしまう。
書籍情報
イベリコ豚を買いに
野地秩嘉、小学館、p.253、¥1620
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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