横田英史の読書コーナー
京都大学人気講義 サイエンスの発想法~化学と生物学が融合すればアイデアがどんどん湧いてくる~
上杉志成、祥伝社
2014.6.20 12:54 pm
京都大学の教養課程で行われている講義「生命の化学」の一部を書籍化したもの。15週にわたる講義のうち、人気の高かったものを抜粋したという。最近の大学の先生はいろいろ工夫を凝らして授業に臨んでいるのが、本書を読むとよく分かる。今の京大ではこんな風に授業が行われているのかと感心させられるし、少し羨ましい。評者の大学時代の教養課程とはずいぶん違っており、そもそも受講するのに選抜試験があるというのも驚きだ。ちなみに、この講義については国際オンライン教育機関edX(エデックス)によるネット配信「The Chemistry of Life」が2014年4月から始まっているので、覗いてみるのもいいかもしれない(当該ページ)。
筆者は化学研究所教授で、京都大学物質-細胞統合システム拠点教授を兼務する。したがって本書では化学式が頻出するが、気にせず読み飛ばしても大きな影響はない。授業は生物学と化学の両方を題材にし、アイデアを出す力を養うことを目的にしているという。したがって研究の成果を表面的に紹介するのではなく、研究の裏側にある人間の考え方を推理することに力点を置く。偉大な科学者が、悩みながら、苦しみながら、楽しみながらアイデアを出したプロセスに、卑近なエピソードを交えながら焦点を当てる。授業はとても洒脱な感じがする。
書籍情報
京都大学人気講義 サイエンスの発想法~化学と生物学が融合すればアイデアがどんどん湧いてくる~
上杉志成、祥伝社、p.284、¥1620
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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