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横田英史の読書コーナー

サイレント・ニーズ~ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る~

ヤン・チップチェイス著、サイモン・スタインハルト著、福田篤人・訳、 英治出版

2014.6.22  12:20 pm

 人が無意識に行う行動や何の変哲もない風景からビジネスチャンスを見出す方法を解説した書。米国のデザイン会社Frogのデザイナーである著者が、日ごろ実践していることの数々を明かしている。「ほう」と思わせる指摘もあり興味深く読める。著者は冒頭でこう述べる。「人々の活動に新しい光をあてる方法を教え、そのなかに仕組まれた社会的な暗号を読み解き、あなた自身の洞察や見識づくり、そしておそらくキャリアに役立てる方法をお見せしよう」と。筆者の行動パターンをそっくりマネるのは難しいかもしれないが、発想法や物の見方について気づきを与えてくれる書である。

 本書は、この書評で以前紹介した松波晴人著『ビジネスマンのための「行動観察」入門』と同じ系統だが、仕事というよりも社会や生活ウォッチングの色彩が強い。世界中を旅する筆者の目の付け所はユニークで面白い。例えば「新しいものを一斉に使いはじめた人たちを見つけ出し、新しいものが人の生活に影響しうるかを感覚的につかむにはどうすればよいか」と問いかける。そして筆者が大局観をつかみたいとき出かけるのは、現地のポルノ市場だという。ポルノには新技術を普及させる力があるからだと指摘する。

 日本についての指摘が多いのが本書の特徴の一つだ。特に注目するのが電子マネー・乗車カード。改札だけではなく、自動販売機に残高を確認できる機能が備わっているところに対し、よく練り上げら考えられた道具だと高い評価を与える。街を観察するときに最良の時間は、世界中のどこでも夜明けころから数時間という指摘は少し意外だが、理由を読めば得心が行く。

書籍情報

サイレント・ニーズ~ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る~

ヤン・チップチェイス著、サイモン・スタインハルト著、福田篤人・訳、 英治出版、p.272、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。