横田英史の読書コーナー
伊東正義 総理のイスを蹴飛ばした男~自民党政治の「終わり」の始まり~
国正武重、岩波書店
2014.7.25 10:23 am
伊東正義といえば、リクルート事件で竹下登首相が辞任した時に次期総理候補に挙げられたが、「本の表紙を変えても、中身が変わらなければダメだ」と固辞したことで名を挙げた政治家である。朝日新聞の政治記者で宏池会を取材してきた筆者が、未公開のインタビューを含め伊東の人物像と当時の政界を紹介している。大平正芳、竹下登、鈴木善幸、宮澤喜一、中曽根康弘、安倍晋太郎、渡辺美智雄、橋本龍太郎といった昔懐かしい面々が登場する。ちなみに伊東による政治家たちの寸評も意外性がある。
本書の価値は伊東の評伝としてだけではなく、興味深いのは政界で繰り広げられたやり取りを、取材メモや録音をもとに詳細に披露しているところにもある。本書の白眉は、当然だがリクルート事件を巡る動きだ。筆者は時系列で関係者の動きを追い、当時の政界を活写する。このほか日米首脳会談の共同声明に関して、外相だった伊東が外務省を巻き込んで鈴木善幸・首相と対立したときのエピソードも興味深い。手打ちがあったり、どんでん返しがあったりと、一寸先は闇の政界の実像を描いている。
書籍情報
伊東正義 総理のイスを蹴飛ばした男~自民党政治の「終わり」の始まり~
国正武重、岩波書店、p.224、¥2700
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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