横田英史の読書コーナー
本は死なない~Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」~
ジェイソン・マーコスキー著、浅川佳秀・訳、講談社
2014.8.15 1:40 pm
初代と第2世代のキンドル開発者が、書籍への思いと読書の未来像を綴った書。米Amazon.com退社後は米Googleに移り、現在は書籍検索サイトの創業者兼CTOとして活躍中という。いかにも「米国の技術者」といった経歴の持ち主だが、本好きは筋金入りだ。電子書籍に関するあまりにも楽観的な見方以外、筆者の考え方には評者も共鳴するところが少なくない。
筆者が強調するのは、デジタルの特性を生かし電子書籍を堪能する時代(Reading 2.0)への移行である。電子書籍のメリットは大きく二つあるという。一つは他者とのつながりを持つことができるソーシャル機能である。確かに、これはKindleで読書をしていると実感できるところだ。もう一つは、ユーザーの読書体験をビッグデータとして蓄積するクラウド機能。この結果、Reading 2.0は読書や出版業界だけではなく、人間の思考や社会構造を変えると予測する。例えば読者が小説を途中で読まなくなった場合に、どこで止めたのかをリアルタイムで把握できる。小説の筋を途中で帰ることだって可能になる。
Reading 2.0の読者体験を考えた場合、筆者が評価するのは実はKindleではなく、米Barnes & Nobleの電子書籍Nookだ。デジタルと実世界をつなぐソーシャル機能を高く評価する。クラウドの面でも、AmazonよりもGoogle に期待を寄せているところが興味深い。
書籍情報
本は死なない~Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」~
ジェイソン・マーコスキー著、浅川佳秀・訳、講談社、p.314、¥1728
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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