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横田英史の読書コーナー

<推薦!>職場の人間科学:ビッグデータで考える「理想の働き方」

ベン・ウェイバー、千葉敏生・訳、早川書房

2014.8.21  4:42 pm

 ユビキタスやビッグデータといった情報技術と組み込み技術の融合、IT融合の応用分野の広がりを実感できる良書。筆者は米MITメディアラボ出身で、現在は経営コンサルティング会社の社長兼CEO。日立製作所やリコーで研究者として働いていたこともある。本書では、「ソシオメーター」「ソシオメトリック・バッジ」と呼ばれるウェアラブル・センサーで把握したデータに基づいて、「理想の働き方」を提案している。

 ウェアラブル・センサーが予想以上に実用に供されており、正直なところ驚いた。本書を読んで思い出されるのが、身につけて人間の行動をトラッキンングする“バッチ”と呼ぶデバイスについて取り上げた、25年ほど前の日経エレの翻訳記事。米Xerox PARCの研究について紹介したIEEEの論文だったと記憶しているが、あの技術がここまで進展したのかと思うと感慨深い。

 筆者の目的は、クリエーティブな人材や専門家、リーダー、社員を生み出す職場の在り方を、「ピープル・アナリティクス」によって提示すること。人々の行動をソシオメトリック・バッジによって計測し、どうすれば職場が効率的になるかを提言する。例えばコールセンターの運営の最適化では、休憩時間を揃えるなど従業員同士の凝集性を高めることが肝要だ。業績が12.9%向上するという。逆に在宅勤務にすると、従業員を12.9%増員しなければならない。職場を効率化するときに、ウオーターサーバーの有無、パーティションの高さ、机の寸法、机の間の距離など、細部に気を配らなければならないことが、本書を読むとよく分かる。

書籍情報

職場の人間科学:ビッグデータで考える「理想の働き方」

ベン・ウェイバー、千葉敏生・訳、早川書房、p.328、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。