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横田英史の読書コーナー

日本の聖域 アンタッチャブル

「選択」編集部、新潮文庫

2014.8.25  10:00 am

 広告収入に依存しない直販雑誌“選択”の人気コラム「日本のサンクチュアリ」を文庫本化したもの。2012年に単行本を上梓しているが、“生もの”を扱っている記事が多いこともあって、文庫化に際して最新の状況を加筆した。選択はFACTAと並んで雑誌ジャーナリズムの良さをもつメディアである。本書では25の組織や制度を俎上に挙げる。新聞ではカバーし切れない記事の数々は読み応え十分である。

 選択の記事の真骨頂は、裏事情を白日の下に晒すところにある。本書では、厚労省「薬系技官」による薬害、東海道新幹線の安全神話、血液事業を独占する日本赤十字、偽装農家、存在意義のない公安調査庁、箱根駅伝の歪み、地震予知という大嘘、解体できない原子力ムラ、被災者を食い物にする被爆医療、記者クラブ、除染事業、子供たちの被爆、東京大学地震研究所といったテーマを取り上げている。一つひとつの記事は短いので、ちょっとした空き時間を使って読み進むのがお勧めだ。

書籍情報

日本の聖域 アンタッチャブル

「選択」編集部、新潮文庫、p.343、¥637

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。