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横田英史の読書コーナー

正直シグナル~非言語コミュニケーションの科学~

アレックス・ペントランド著、柴田裕之・訳、みすず書房

2014.9.9  10:39 am

 この書評で取り上げた「職場の人間科学」で参考文献として挙げられていた書。同書でも登場する「ソシオメーター」「ソシオメトリック・バッジ」と呼ばれるウェアラブル・センサーによって、「神の視座」から眺めた人間像が把握できるようになった。米MITメディアラボ教授の筆者は、ウェアラブル・センサーが突き止めた人間の無意識の意思表示「正直シグナル」に注目し、センサーネットワークと行動の計算モデルを結びつけることで賢い社会の構築を夢見る。最新の研究成果を分かりやすく解説しており、行動科学に興味のある方にお薦めの1冊だ。

 ここでいう正直シグナルとは、意識することなく心のうちが正直に出てしまうことを指している。人間の相互作用は、この正直シグナルをお互い伝え合うことで成り立っているというのが、筆者の見立てだ。ちなみに筆者は正直シグナルを、相手に与える影響力、他の人を反射的になぞるミミクリ(共感を示す無意識のシグナル)、関心を持ったり興奮したことを示す活動レベル、集中しているシグナルの一貫性の四つに分類し、それぞれについて詳細に考察を加えている。

書籍情報

正直シグナル~非言語コミュニケーションの科学~

アレックス・ペントランド著、柴田裕之・訳、みすず書房、p.248、¥2808

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。