横田英史の読書コーナー
生き心地の良い町~この自殺率の低さには理由がある~
岡檀、講談社
2014.9.18 12:46 pm
医大講師の筆者が、自殺率がきわめて低い徳島県南部の旧海部町(現在は海陽町)を対象にその理由を探った書。大学院生時代の研究をベースに一般向け読者に書き下ろした。旧海部町の自殺率は、全国の市区町村で低い方から数えて8番目。島を除くと全国一だったという。先日の朝日新聞土曜版「be」に著者が取り上げられていたので、記憶されている方もいるかもしれない。著者は4年にわたる現地取材だけではなく、アンケートや統計データを駆使して“秘密”に迫る。町民とのちょっとした会話や触れ合いから、さまざまな知見を得ていく過程はとても興味深い。
旧海部町にも、病苦や健康問題、経済問題といった自殺危険因子は他の市区町村と同様に存在する。では、なぜ旧海部町の自殺率はきわめて低いのか。筆者は、自殺予防因子が存在するに違いないと仮説を立てて現地調査を始める。そこで見つけたのは、町民たちのユニークな人生観と生活の知恵の数々である。具体的には、多様性を認める姿勢、人物本位主義、ゆるやかにつながる関係性など、五つの自殺予防因子を著者は指摘する。五つの因子について、具体例を引きながら分析を進めており納得感がある。確かに「生き心地」が良さそうだ。
それにしても、こうした町が徳島の田舎にぽつんと存在すること自体が不思議である。人間社会の面白さと希望を感じさせる書で、ほっこりした気分になりたい方にお薦めの一冊だ。
書籍情報
生き心地の良い町~この自殺率の低さには理由がある~
岡檀、講談社、p.214、¥1512

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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