横田英史の読書コーナー
自由主義の政治家と政治思想(歴史のなかの日本政治 1)
松田宏一郎、五百旗薫ほか、中央公論新社
2014.9.24 10:24 pm
明治から昭和初期の政治家と思想家が主張した「自由主義」の中身を検証し、当時の日本が抱えていた問題点を考察した書。9人の近代日本政治史と政治思想史の研究者がそれぞれ1章を執筆する形式をとる。具体的には立憲主義、早稲田政治学、後藤新平とボーイスカウト、関東大震災時の自警団の評価、内地雑居問題にみる国際化、小会派の政治家の選挙と政治観、普通選挙といったテーマを取り上げる。最初から最後まで通読することにあまり価値はないので、気になる章をピックアップするのがお勧めだ。
評者が興味をもって読んだのは、立憲主義、震災時の自警団をめぐる議論のねじれ、内地雑居問題の3章である。立憲主義は、何か立派であるというイメージを伝えるだけの魔法の言葉として機能し、定義が丁寧に説明されることは稀だったという。本書では、立憲主義とは何だったのか、その実像を明らかにする。関東大震災時の自警団についての論考は通説とのギャップが興味深い。虐殺など自警団に対する現在の評価は厳しいが、意外にも自由主義的知識人における評価が高かったことを本書は明らかにする。
現在の外国人労働者受け入れ問題と通底するのは内地雑居問題である。外国人の内地雑居問題が政治かつ社会問題化し、開かれた国になるのか、閉ざされた国のままなのかが議論された。当時の伊藤博文や西園寺公望といった指導者は、日本の置かれた国際情勢を客観視できず耳目を引く対外硬論になびく世論を信じていなかった。一方で、国民の経済競争力や社会的応力については潜在能力を高く評価。内地雑居反対派や対外強硬派とは異なり、絶えず「世界の中の日本」を意識し、欧米との競争的パートナーに日本を育てることを構想していたという。
書籍情報
自由主義の政治家と政治思想(歴史のなかの日本政治 1)
松田宏一郎、五百旗薫ほか、中央公論新社、p.374、¥3456

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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