横田英史の読書コーナー
異端児たちの決断~日立製作所 川村改革の2000日~
小板橋 太郎、日経BP社
2014.10.5 10:29 pm
2009年3月期に、国内の製造業で史上最大となる7873億円の最終赤字を計上した日立製作所が、復活するまでの軌跡を追ったノンフィクション。巨艦日立製作所の舵を取った川村隆を軸に、それを支えた幹部たちの行動と経営改革の具体的な内容を明らかにする。この書評で2014年6月に取り上げた「会社が消えた日~三洋電機10万人のそれから~」と併せて読むと、企業経営とは何か、人事の妙を感じることができる。ともに電機業界の企業の盛衰記で、EISの読者の方にお薦めである。
本書は、川村が乗った飛行機がハイジャックに遭う場面で始まる。たまたま乗り合わせた非番のパイロットの機転が墜落寸前の飛行機を救う。筆者は、非番のパイロットの英断と、日立副社長を退き日立マクセル会長だった川村が本体に戻り日立を立て直す姿を重ね合わせる。このあたりの巧妙な筆致に知らず知らずに引き込まれる。ちなみに筆者は日本経済新聞のデスクである。
評者にとって、川村の執行役会長兼社長の就任は驚きだった。前任の社長・古川一夫は62歳。日経コンピュータ編集長時代にインタビューしたこともあった。それが7歳年長の川村にバトンをわたす。若返りに逆行する驚きの人事である。川村の脇を固める幹部6人のうち3人も、いったんは日立を去りグループ会社の社長や会長に就いていた面々だ。ラインからいったん外れていた川村たちは、日立の改革に大鉈を振るう。社会イノベーション事業への注力、デジタル家電と自動車機器部門の分社化などポートフォリオの入れ替え、不採算部門の撤退や統廃合、連結子会社の削減などである。
書籍情報
異端児たちの決断~日立製作所 川村改革の2000日~
小板橋 太郎、日経BP社、p.271、¥1620
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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