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横田英史の読書コーナー

もの忘れの脳科学~最新の認知心理学が解き明かす記憶のふしぎ~

苧阪満里子、ブルーバックス

2014.10.10  10:58 am

 「人の名前が出てこない」「何を取りに来たのか思い出せない」「買い忘れをする」。誰にも体験する「もの忘れ」の原因を、脳科学の観点から解説した啓蒙書。もの忘れは、記憶を一時的に蓄える「ワーキングメモリ」がうまく働かないために起こる。本書は、記憶の仕組み、ワーキングメモリの働き、若者と高齢者の違い、幼児や児童の発達過程、ワーキングメモリ強化法などを紹介する。筆者らが考案したワーキングメモリ計測法も巧妙で興味深い。ワーキングメモリ強化法はさほど斬新ではないが、「最近、もの忘れがひどい」と感じている方に一読をお薦めしたい。

 ワーキングメモリは、20秒で90%が忘れ去られてしまう短期記憶、生涯にわたり保持し続ける長期記憶と異なる第3の記憶だ。目的を成し遂げるために必要な情報を、必要な時間だけ記憶しておくためのものである。問題は、その容量には限りがあること。ちょっとしたことで消えてしまう。例えば、先に覚えたことが、その後に記憶すべき内容に干渉して、新しく覚えられない。あるいは新しく覚えると、先の記憶が飛んでしまう。目的以外のものに注意が逸れると、本来の目的が記憶から消えてしまうといった現象も現れる。身に覚えのある方も少なくないだろう。

書籍情報

もの忘れの脳科学~最新の認知心理学が解き明かす記憶のふしぎ~

苧阪満里子、ブルーバックス、p.192、¥864

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。