Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

ブラックスワンの経営学~通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ~

井上 達彦、日経BP社

2014.10.16  12:01 pm

 経営学会アカデミー・オブ・マネジメントが選んだ最優秀論文の事例研究を紹介した書。専門家があり得ないと評価した事例を取り上げるだけではなく、研究内容と方法を解説している。因果関係を丹念に解き明かし、経営学の科学的側面を明らかにしており読み応えがある。筆者によると事例研究は、人間の知性を活発にする力、複雑な現象に対応する力(因果関係を読み解く力)、将来を切り開く力(前例がなくても有効な仮説を導く力)をもっている。役立たない教科書的な事実紹介ではなく、実務に使えるレベルにまで迫っているところに本書の価値がある。

 例えば、通説をくつがえした事例として紹介している「凋落した教会で起こった出来事」は実に興味深い。通説では、急進的な変化は非連続にしか起こらない。ところがこの教会とホームレスとの交流は、若者が提案したホームレスへの朝食提供という小さな変化が、予想外なかたちで結びつき、抜本的な変化につながった。

書籍情報

ブラックスワンの経営学~通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ~

井上 達彦、日経BP社、p.280、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。