横田英史の読書コーナー
地方消滅 東京一極集中が招く人口急減
増田寛也編著、中公新書
2014.10.22 12:05 pm
日本の将来を考える上で重要となる情報を提供してくれる警世の書。読み終えたあと、言いようのない不安に襲われる。例えば若年女性人口の推移から予測すると、このままでは896の市町村が消滅しかねない。なんと北海道・東北地方は80%、山陰地方は75%、四国は65%の自治体が消滅可能都市(20~39歳の女性人口が50%以下に減少する市区町村)に当てはまる。情報は盛り沢山だが、図を効果的に使っているので分かりやすい。ビジネス街の書店でベストセラーのランキング入りしているのも納得である。元岩手県知事で元総務大臣の増田寛也と、藻谷浩介や小泉進次郎氏との対談も興味深い。
日本は2008年をピークに人口減少に転じ、このままだと2010年に1億2896万人だった日本の総人口は2050年に9708万人となり、2100年には4959万人へと、現在の40%、明治時代の水準にまで急減する。人口予測は精度が高いというだけに不気味な数字だ。もっとも、いまから手を打っても、効果が出るのは数十年後というのが人口問題の厄介なところ。出生率改善が5年遅れるごとに、将来の安定人口が300万人ずつ減少する。今すぐ手を打たなければならないのだ。
地方消滅の根本的な原因の一つが東京への集中であることも、本書を読むとよく分かる。若者が子育てにとって劣悪な環境にある東京圏に移動した結果、日本は人口減少社会に突入したと筆者は分析する。東京圏の人口は増えたが、環境が悪くて子供を産もうにも産めない。結果として日本の出生率はどんどん下がった。いまや地方では高齢者さえ減り始めた一方で、大都市では高齢者が激増する。東京では2040年までに横浜市に匹敵する388万人の高齢者が増え、高齢者率は35%に達する。医療、介護における人材不足は深刻を通り越し、絶望的な状況になる。
書籍情報
地方消滅 東京一極集中が招く人口急減
増田寛也編著、中公新書、p.243、¥886
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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