横田英史の読書コーナー
つながりっぱなしの日常を生きる~ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの~
ダナ・ボイド著、野中モモ・訳、草思社
2014.11.27 10:31 am
子供の頃からインターネットに慣れ親しんだ世代「デジタルネイティブ」に関する幻想を指摘し、10代166人へのインタビューに基いて実像を描いた社会学の書。デジタルネイティブというレッテルを貼ることは不正確だし、責任逃れで有害だと具体的な事例から指摘する。彼ら・彼女らは必ずしもITリテラシが高いわけではなく、試行錯誤しながらネット時代に対応しようともがいている。驚くような事実が書かれているわけではないが、デジタルネイティブの実像を知る上での情報を得ることのできる書である。
新しい技術やサービスに対する警戒心は常に時代も同じだ。小説、マンガ、ロック、テレビ、ゲームで起こったことが、インターネットでも生じたというのが筆者の見解だ。本書は、ネット中毒、プライバシー、いじめ、不平等、リテラシーといった観点から、若者とインターネットの関わりを明らかにする。そこで語られるのは、地理的な自由が制限され、友だちと遊んだりリラックスできる自由時間が減らされた、米国の若者の姿である。10代にとっての物理的な公共空間が減り、FacebookやTwitterといったバーチャルな世界が唯一の公共空間となっている。10代は決して愚かではなく、インターネットで社会について学び、スキルを育てていることを本書は明らかにする。
筆者は、望ましくない結果を全てテクノロジーのせいにする危険性を訴える。インターネットのせいにした方が、社会的、文化的、個人的要素について考えるよりも楽だからだ。インターネットの父と呼ばれるヴィントン・サーフの言葉はこのように語る。「インターネットは私たちの社会を反映したものであり、その鏡は私たちが目にするものを映し出す。私たちが鏡の中に見るものが気に入らないとしたら、鏡を修理するのではなく、社会を修理しなければならない」と。
書籍情報
つながりっぱなしの日常を生きる~ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの~
ダナ・ボイド著、野中モモ・訳、草思社、p.384、¥1944