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横田英史の読書コーナー

今治タオル 奇跡の復活~起死回生のブランド戦略~

佐藤可士和、四国タオル工業組合、朝日新聞出版

2014.12.12  10:59 am

 日本だけではなく世界的なタオル・ブランドになった「今治タオル」。しかし、中国をはじめとした新興国の安値攻勢に押され一時は危機的状況に陥り、日本の製造業にありがちな「いいモノをつくっているが売れない」状態だった。そんな地場産業が世界的ブランドを打ち立て、「いいモノをつくっているからこそ売れる」になるまでの過程を、ブランディングを主導したアートディレクター・佐藤可士和と、佐藤のアイデアを実行に移した四国タオル工業組合が振り返った書。やっぱりモノづくりはいいなぁと感じさせる内容になっている。とても読みやすく、気づきも多いので正月休みに読む本としてお薦めである。

 前半は佐藤がブランディング戦略を紹介する。今治タオルとの出会いから始まり、品質基準の策定、ロゴマークの作成、タオルソムリエの開始、マニュアルの整備、アンテナショップの設置、展示会への出品といったエピソードを交えて持論を展開する。ブランドは「つくる」よりも「守る」ほうが難しいというのがよく分かる。後半は四国タオル工業組合の参加企業が、存亡の危機から復活を果たすまでに、地元で何が話し合われ、どういう行動を起こしたかを振り返る。自慢話で終わることなく、「ちょっといい話」を織り込むなど編集者の手がうまく入っている。

書籍情報

今治タオル 奇跡の復活~起死回生のブランド戦略~

佐藤可士和、四国タオル工業組合、朝日新聞出版、p.224、¥1620

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。