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横田英史の読書コーナー

国家と秘密~隠される公文書~

久保亨、瀬畑源、集英社新書

2014.12.16  10:20 am

 日本における情報公開と公文書の管理体制、特定秘密保護法の内容と問題点を解説した新書。第2次世界大戦直後に軍部による戦争関連資料の焼却や福島原発事故における情報隠蔽など、国民の知る権利を軽んじてきた日本の歴史を振り返る。筆者はこの原因を、情報公開と公文書の管理体制の不備に求める。12月10日に施行された特定秘密保護法を強く意識しているのは確かだが、バイアスはさほど強くない。米国、英国、フランス、中国、台湾、香港、韓国、ベトナムの現状についても紹介しており、よく整理された特定秘密保護法の解説とともに、国民の知る権利について勉強したい方にぴったりだろう。

 まず筆者は、日本の公文書管理の歴史を紐解く。法律を都合よく解釈して官僚の手によって廃棄・焼却されてきた公文書の歴史を振り返る。行政機関が下した結論こそ残っているが、そこに至るまでの過程は闇の中というのが日本の行政機関の現状である。責任を問われる証拠は残らず、役人にとってこれほど好都合なことはない。それにしても、行政機関が情報公開法の施行直前に大量の文書を廃棄していたことや、情報公開制度を骨抜きにする「文書を作らず、残さず、手渡さず」の3原則を持っていたという事実を突きつけられると唖然とする。

書籍情報

国家と秘密~隠される公文書~

久保亨、瀬畑源、集英社新書、p.208、¥778

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。