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横田英史の読書コーナー

STAP細胞に群がった悪いヤツら

小畑峰太郎、新潮社

2015.1.22  10:56 am

 「新潮45」連載時から話題を呼んだ記事を単行本化したもの。評者は連載時に歯抜け状態で読んでいたので、単行本になってさっそく購入。金銭欲と名誉欲、言い換えれば金脈と人脈という二つの切り口でSTAP細胞事件の裏側に切り込んでいる。分かりやすい見立てでストーリー展開はかなり大胆である。ライターである筆者は細かい部分は端折りながら、一気呵成に核心に迫ろうと筆をすすめる。立て付けを単純化しすぎているきらいもあるが、その分だけ分かりやすいともいえる。摩訶不思議なSTAP細胞事件には、こういう解き明かし方もあるのかと驚かされる。

 お金の問題については、ベンチャー企業を巡るインサイダー取引疑惑を取り上げるとともに、巨額の国家予算にぶらさがる産官学の利権構造に言及する。名誉欲の中心となるのは再生医療における主導権争いである。筆者は前書きで、「事件の背後には巨額の国家予算を奪い合い、市場を使った錬金術を目論んだ科学者、官僚、金融マンの暗闘がった」と綴る。読者の感情に訴える面白い筋立てだ。ページ数も200ページそこそこなので、あっと言う間に読める。出張時に携えて、帰りの新幹線でビール片手に読むのがピッタリの書だろう。

書籍情報

STAP細胞に群がった悪いヤツら

小畑峰太郎、新潮社、p.218、¥1404

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。