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横田英史の読書コーナー

江戸しぐさの正体~教育をむしばむ偽りの伝統~

原田実、星海社新書

2015.2.2  10:25 am

 「江戸しぐさ」を初めて目にしたのは、営団地下鉄(現在の東京メトロ)の構内に貼られたポスターだったと記憶する。「傘かしげ」「肩引き」などのイラストがあった。本書は、この江戸しぐさを徹底的に否定している。市井の歴史研究家である筆者は、江戸しぐさが想像の産物で捏造であることを歴史的な知識をもとに明らかにする。まさにメッタ斬りという感じである。江戸しぐさは企業の研修で取り上げられたり、公民の教科書や副読本にも登場しているという。評者に本書の主張の是非を判断する知識はないが、こうした意見が存在することを知っておいて損はない。
 筆者は江戸しぐさが江戸時代とは無関係ということを、歴史を紐解きながら断じる。むしろの昭和の風俗と一致する、1980年代に発明された虚構というのが筆者の見立てだ。内容は悪くないのだが、新書にしては押し出しが強すぎるデザインはいかがなものか。本書はデザインで損をしている気がする。

書籍情報

江戸しぐさの正体~教育をむしばむ偽りの伝統~

原田実、星海社新書、p.232、¥886

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。