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横田英史の読書コーナー

<推薦!>地政学の逆襲~「影のCIA」が予測する覇権の世界地図~

ロバート・D・カプラン、櫻井祐子・訳、朝日新聞出版

2015.3.12  10:39 am

 中国やインド、中東、アフリカ、中南米で過去に起こった、あるいは今まさに起こっている事象を地政学の観点から読み解いた書。中国の海洋進出やイスラム国の台頭などの事例について、地政学の観点から解説している。先を読めない時代には地図が重要な意味をもち、地図は次に起こりそうなことを予測するのに役立つと、著者は主張する。地理が政治やイデオロギーと絡み合いながら歴史の本質を織りなしているというのが著者の見解だ。ところどころに挿入されている地図は読者の理解を助けてくれるし、地政学の理論を初学者に分かりやすく解説している点も評価できる。地政学を学ぶとともにその適用法を知ることができる、お薦めの1冊である。
 世界は混沌としているように見えるが地政学の考え方を適用すれば「ちゃんと道理にかなっている」、地理上に占める位置は永続的であり「世界はフラット化していない」と論じる。取り上げるのは、現在世界の火種となっており、これからどのように展開していくのかが関心を集めている地域ばかり。例えば、南北朝鮮の動きと日本の再軍備化、中国の進出と米軍、中国とインドの関係、中東和平のカギを握るイラン、ロシアにおけるウクライナの位置づけ、ヨーロッパとアジアの接点であるトルコの意味、欧州債務危機の原因といった興味深い論点について地政学的な解釈を加える。
 中国の地政学的な利点と進出の必然性について言及した個所や、台湾と北朝鮮の未来がユーラシアの勢力バランスを大いに左右するという主張はとりわけ印象深い。やや強引な議論の展開も見られるが、今の時代を読み解くヒントを与えてくれる良書であるのは間違いない。

書籍情報

地政学の逆襲~「影のCIA」が予測する覇権の世界地図~

ロバート・D・カプラン、櫻井祐子・訳、朝日新聞出版、p.416、¥3024

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。