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横田英史の読書コーナー

タックス・イーター~消えていく税金~

志賀櫻、岩波新書

2015.3.16  11:00 am

 日本の税金を食い物にしている組織・業界・族議員に焦点を当てた書。タイトルから内容がほぼ想像でき、人口に膾炙した話題が多くて、驚きは少ない。昨年末刊行の新書にしては「今」を感じないのは残念である。例えば予算統制の目が行き届かないことをよいことに餌食になっているのは、特別会計予算(特会)や財政投融資(財投)、震災復興予算という指摘はいずれも重要だが今さら感が漂う。アマゾンやアップル、グーグル、マイクロソフトの租税回避についても取り上げるが、ツッコミ不足が目立つ。

 筆者は元官僚だけに、役人や族議員(農林族、建設族、厚生族、郵政族など)への指摘は手厳しい。特に予算がなければ事業を遂行できない農水省、建設省、厚生省の役人は、かつての志を失い、政財界と持ちつ持たれつの関係を築いていったと批判する。厚生官僚は法制度の複雑さと不透明さを逆手に取り、詭弁と欺瞞、さらにはデータの不開示と隠蔽操作によって社会保障制度を食い物にしていると断じる。

書籍情報

タックス・イーター~消えていく税金~

志賀櫻、岩波新書、p.240、¥842

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。