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横田英史の読書コーナー

マクドナルド 失敗の本質~賞味期限切れのビジネスモデル~

小川孔輔、東洋経済新報社

2015.3.19  4:00 pm

 経営不振に陥っているマクドナルドについて、同社を見続けてきた経営学者(法政大学大学院教授)が原因を分析した書。原田泳幸の経営手法が持て囃された時期に筆者は、「時代の流れに合っていない」と感じていたという。高齢化社会の到来、食文化の和風回帰、後継経営者の不在、安価で良質な労働力の確保といった課題が克服できないと、ハンバーガー事業の将来は厳しいと指摘する。本書はマクドナルドを用いた優れたケーススタディであり、経営学だけではなく、ファストフード業界や外食産業、フランチャイズ制度など多くのことが学べる。身近なだけに思い当たる節が多く説得力があるのも本書の強みとなっている。

 藤田田と原田泳幸が社長として経営の指揮を執っていた時期には10年の隔たりがある。ところが売上高の推移をグラフにすると、その形は瓜二つという指摘は興味深い。最初は順調だが、8年目に経営危機に陥る。筆者は原因を、マーケティングの失敗、マネジメントと顧客、従業員から成るサービスのトライアングルの崩壊、画期的なイノベーションの不足に求める。原田の場合、売上高の成長と短期的な利益を求めて小手先のマーケティングに注力して墓穴を掘ったとする。低迷の原因は、行き過ぎた米国の株主資本主義の定見のなさと、短期的に収益をあげようとしたマネジメントの失策にあると手厳しい。

 マクドナルドの置かれた環境は現在、さらに厳しさを増している。値上げによる値ごろ感の喪失、大手飲食チェーンに対する競争上の劣位、コンビニの脅威など克服すべき課題は多い。

書籍情報

マクドナルド 失敗の本質~賞味期限切れのビジネスモデル~

小川孔輔、東洋経済新報社、p.198ページ、¥1620

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。