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横田英史の読書コーナー

偉大なる失敗:天才科学者たちはどう間違えたか

マリオ・リヴィオ、千葉敏生・訳、早川書房

2015.4.21  2:30 pm

 ダーウィン、ケルヴィン、ポーリング、ホイル、アインシュタインという5人の科学者が、どのような誤解や誤り、失敗を犯したを詳細に紹介した書。筆者は偉人たちの功績よりも、発見に至るまでの思考プロセスに着目して話を進める。内容は高度で、スイスイ読めるとは言い難い。集中力が切れると、置いてけぼりを食って筋が追えなくなってしまうので要注意だ。
 チャールズ・ダーウィンは、メンデルの法則に肉薄していたにもかかわらず気づかなかった。しかし遺伝学の初歩を誤解していたにも関わらず、ダーウィンの理論の大部分が正しかったことは驚きだと筆者は述べる。ライナス・ポーリングのDNAにまつわる話も面白い。ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの「二重らせん構造」を発表する前に、ポーリングは「三重らせん構造」を提唱していたが、その背景には、専門家とは思えない凡ミス(化学の基本法則の無視)と思い込みが存在したという。アルバート・アインシュタインのミスは、一般相対論に加えられた宇宙定数だ。アインシュタインは後に、「宇宙項は我が人生最大の失敗」だと語ったと伝えられている。しかし筆者は、この言葉はビッグバン提唱者のジョージ・ガモフによる創作だったと推理している。

書籍情報

偉大なる失敗:天才科学者たちはどう間違えたか

マリオ・リヴィオ、千葉敏生・訳、早川書房、p.410、¥2592

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。