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横田英史の読書コーナー

マーケット・デザイン~オークションとマッチングの経済学~

川越敏司、講談社選書メチエ

2015.5.21  9:59 am

 2012年ノーベル経済学賞のテーマとして知られるマーケット・デザインを紹介した啓蒙書。筆者によると、経済学の分野でいま最もホットな分野という。ここでいうマーケット・デザインとは、経済原理によって現実世界における制度を最適に設計・改革することを指す。企業や一般消費者といったオークション参加者やマッチング参加者が、誰に指示されるわけでもなく、知らず知らずのうちに最適な分配方式に導かれるのが理想だ。筆者は歴史的な経緯を解説するとともに、具体的な事例を挙げながらマーケット・デザインの原理を解説する。出来のいい入門書に仕上がっており、お薦めである。
 公的なオークションといって思い浮かぶのは、米FCC(連邦通信委員会)の周波数オークションだ。1994年から始まり81回にわたって実施された米国の周波数オークションは政府に莫大な収入をもたらした。同時に方式の検討・提案にあたって経済学(ゲーム理論や実験経済学)が大きな役割を果たし、マーケット・デザインという学問が確立する弾みとなったという。

書籍情報

マーケット・デザイン~オークションとマッチングの経済学~

川越敏司、講談社選書メチエ、p.256、¥1782

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。