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横田英史の読書コーナー

<推薦!>フューチャー・オブ・マインド

ミチオ・カク著、斉藤隆央・訳、NHK出版

2015.5.28  10:00 am

 脳(心)をめぐる技術と研究の最先端を紹介したノンフィクション。帯に「SFの世界が現実になる!」とあるが、確かにその通りである。驚くべき世界が現実のものになりつつることが本書を読むとよく分かる。内容の斬新さと優れた翻訳によって、500ページを超える大著だが長さを感じさせない。お薦めの1冊である。ちなみに筆者は「弦の場の理論」で有名な理論物理学者。この書評でも著書「サイエンス・インポッシブル」を取り上げたことがある。
 筆者が取り上げるのは、テレパシー、念力、脳のリバース・エンジニアリング、ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)、人工脳、記憶を消す薬、光遺伝学を使ったマインド・コントロールなどなど。よくもまあ魅力的な話題をこれだけかき集めたものだと感心する。
 まずテレパシー。カリフォリニア大学バークレー校は脳内のイメージを再構成し、人の思考をビデオに収めることに成功した。脳波センサーを使ってボールを動かし、迷路を抜けさせる玩具さえ売り出されているという。ブレイン・マシン・ブレイン・インタフェース(BMBI)の話は凄まじい。脳同士がインターネットを介してコミュニケーションをする。BMBIによって、会話の際に感情やニュアンス、心理状態といった情報を伝えることが可能になるという。このほかマウスが形成した記憶を記録し、コンピュータにデジタルデータとして保存することに成功した実験も興味深い。いずれ脳に記憶をダウンロードすることが可能になるかもしれない。

書籍情報

フューチャー・オブ・マインド

ミチオ・カク著、斉藤隆央・訳、NHK出版、p.512、¥3380

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。