横田英史の読書コーナー
(世界のなかの日本経済:不確実性を超えて 7)拡大する直接投資と日本企業
清田耕造、NTT出版
2015.6.21 11:39 am
対外投資をはじめとする企業のグローバル化が日本社会や産業に与えた影響について、定量的なデータに基づいて考察した書。「空洞化」の議論などにみられる数々の誤謬を鋭く指摘している。日本企業の海外進出や外資系企業の日本への進出は、平均的には企業の生産性向上につながり、極端に雇用を削減している事実はないと結論づける。国内の労働需要の減少は機械化やIT化の進展といった要因の影響が大きい。逆に非製造業の場合、本社機能を強化するために海外進出が国内雇用創出に結びついたりする。
直感が必ずしもあてにならないことが、本書を読むとよく分かる。筆者は本書を執筆した理由として、日本企業の海外進出に関する多くの新事実が発見されているにもかかわらず、研究者の間でしか共有・継承されていないことを挙げる。新聞報道を正しく理解するための副読本として向く書である。
筆者は日本に対する投資「対日直接投資」についても取り上げる。対日直接投資は、金額で見ても、GDP比率でみても先進諸国と比べて非常に小さい。米国と韓国がGDP比率でそれぞれ16.9%と12.6%なのに対し、日本は3.7%にすぎない。対日直接投資が少ない要因には「英語でのコミュニケーションの困難性」が挙げられているという。
書籍情報
(世界のなかの日本経済:不確実性を超えて 7)拡大する直接投資と日本企業
清田耕造、NTT出版、p.224、¥2700

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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