横田英史の読書コーナー
「日本人と英語」の社会学 ~なぜ英語教育論は誤解だらけなのか~
寺沢拓敬、研究社
2015.6.26 11:43 am
日本社会に流布する英語にまつわる数々の言説を統計データを駆使して徹底的に批判した書。「多くの人に英語が不可欠だ」と声高に主張する行政やマスメディアは、裏付けのない俗説に振り回されているとする。持論に導くための展開に牽強付会の感がするところもあるが、著者の意見は一読に値する。英語教育や日本人の英語力に関心のある方に向く書である。
筆者が取り上げるのは「日本人は世界一の英語下手」「これからの社会人に英語は不可欠」「グローバル化によって英語を必要とする人は年々増えている」「英語ができれば給料が上がる」「英語力は仕事のうえで武器になる」「日本人の女性は英語好き」といった都市伝説である。それぞれについて、統計的な手法を駆使して検証する。
英語力を得られるか否かは出身階層によって左右される。日本人の英語力は国際的に低いのは事実だが、日本だけが突出して低いわけではない。問題は高い階層の人々の英語力が他国と比較して低いこと。表舞台に立つことの多い人たちだけにが目立ってしまい、都市伝説が生まれた。仕事で英語を使っている人は、日本人全体からすればごくわずかだし、英語学習をしている人や学習意欲のある人の割合は限定的で語学ブームを一般化できないと語る。英語力には実質的な賃金上昇効果がないか、あったとしても比較的小さいレベルというのも俗説と異なっている。
書籍情報
「日本人と英語」の社会学 ~なぜ英語教育論は誤解だらけなのか~
寺沢拓敬、研究社、p.300、¥2808
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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